11月21日(土)13時と17時から、「共に生きる会」最初の事業「語りと映画で知る『ストーマ』のこと」をしました。コロナ感染拡大が懸念される中でしたが、無事に予定通り開催することができて、ホッとしています。幸いにして穏やかな秋の日となり、換気扇だけでなく、玄関、裏口とも戸を少し開け放ち、通り庭を通して空気が流れるようにしました。後で聞いたところ当日ご講演いただいた声優・真山亜子さんは晴れ女だそう。私も晴れ女、お天道様が味方して下さったのでしょう。もちろん、消毒、検温ぬかりなく。

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最初にメンバーの紹介。右の谷進一さんが当会の副代表で、本業は訪問看護師ですが、上映した『HOME NURSE~訪問看護の時間~』の映画監督でもあります。毎年京都で開催される手話の映画祭に出品されていて、この作品も2月の映画祭で上映されました。俳優もされています。この日はずっと手話通訳をしてくださいました。谷さんにお聞きしたところ、通常派遣される手話通訳者は15分ごとに交替するのだそうですが、ずっと笑顔で通訳して助けてくださいました。

この日の催しには、オストメイトの方、聾の方、車椅子の方も参加してくださり、「共に生きる会」らしい顔ぶれで場を共有できたことも良かったです。中央におられるのが会員の藤岡一二三さん。本業はホームヘルパーさんですが、生活支援員や子ども食堂、博物館のボランティアなどで活躍されています。そして、マイクでしゃべっているのが代表の私、太田文代です。よろしくお願いいたします。

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最初に大腸がんでストーマになった夫と介護する妻キミ子が出てくる山川公平監督『あんたの家』を上映しました。この作品を上映したことで、監修をされたNPO法人ストーマ・イメージアップ・プロジェクト(SIUP)から①『人工肛門ってなに?』②ストーマ保有者の困った経験の実態調査報告書『あなたに知ってほしいストーマとともに生きること』③SIUPのリーフレットの提供を受け、参加者の皆様にお配りしたほか、サイトでの広報やチラシ配布にもご協力を頂きました。

「もう少し、ストーマイメージアップの前向きな映画が見られたら良かった」という感想も後で聞きましたし、腕の痣から虐待を受けていると思われる家出した女の子に「逃げて良い。けど、今は帰り」というキミ子の対応に疑問を感じた人もおられました。続けてキミ子は女の子に言います「そのうちな、ちゃーんと一人で生きていける方法が見えてくる。何か自分にできることが細い糸みたいに降りてくんねん。切ったらあかん。口でなんぼ言うたって、おかんにはあんたが必要やねん。家族の糸だけは切ったらあかんのや」と。この台詞は「なんもかも犠牲にして」とどこかで思っている自分自身に言っている言葉でもありましょう。

真山さんとメールしていて「貧しさに病気、ストーマなど重なると、悲惨な現実もあるという問題提起の映画なのでしょう。確かに(ストーマになったことで)終わったと思って、自死される方もいらっしゃいます。そういう意味では、イメージアップとはいかず、辛いけど現実を突きつけたものかもしれません」と書いて下さいました。
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2作品目の谷監督『HOME NURSE~訪問看護の時間~』の一場面。
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上映前後に谷さんが挨拶。
……訪問看護の仕事をしているので、そのことを知って欲しいなと思って作りました。1週間に1、2回人工肛門の利用者さんを訪れてストーマの貼り替えをします。『あんたの家』では妻が交換していましたが、一人暮らしの高齢の方には大変なので、僕たちが行って交換します。だいたいお風呂に入ってから交換します。今日は排泄物を受ける「パウチ」を持って来ました。休憩の時に見てください。いろんな会社がありますが、(写真で手にしておられるものは)1個500円位で、毎回替えるとお金がかかるので、皮膚の弱い人などは細長いタイプのものを使っておられます。下の部分は開いていて、そこを輪ゴムで括って使います。これが1個100円。これを貼り替えて使っています。

この映画は昨秋に作りましたが、その後で訪問先の聾の夫婦がポータブルトイレを借りていました。映画では、人のおしりに触れるものは借りられないと表現していますが、最近は借りられるトイレもあるように変わってきています。情報提供でした……
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『HOME NURSE~訪問看護の時間~』には、ストーマの人だけでなく、糖尿病の人、便秘の人、終末期の利用者さんも登場します。そして、その利用者さんや家族に聾の方も登場しますので、新人の訪問看護師さんが利用者さんと手話で会話する場面も多く描かれ、さらに分かりやすく字幕もついているので、誰にでも内容がわかる優しい短編作品です。

来年、谷さんは手話映画の新作を作る予定で準備を進めていて、秋に「共に生きる会」でも上映したいと考えています。そういうこともあって、今回、手話のリーフレット「日常よく使う手話イラスト50 やってみよう手話」を作りました(手前の女性が手にしてご覧になっているもの)。参加者の皆さんにもお配りしましたので、活用していただければ嬉しいです。
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イラストを描いてくださったのは、小川和久さん。子どもの頃から絵を描くのが大好きだったという聾の方です。スクリーンに映し出しているのは「共に」「生きる」「会」のイラスト。小川さんの「皆さん、一緒に勉強しましょう」という呼びかけで、両手の人差し指を前に出して「共に」
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両手をグーの形にして胸の前に、その両腕を真横へ引いて「生きる」(「元気」は似ていますが、両腕を真横ではなく上下に動かす)。最後の「会」は人部の形を両手で作ってから、左右斜め下に開きます。皆さんと一緒に勉強した「共に生きる会」の手話表現、微笑ましい時間でした。「イラストデザインは、『オリンピック』のように、いくつかのコマを、一つにまとめるのが難しかった」と小川さん。素人の様々な要望に快く応えてくださったおかげで、とても良いものが出来ました‼ 今後の催しでもお配りして、手話を広めたいです。

映画の中で、強制不妊の話が出てきました。かつて障害者は子どもを持つことができないとされた時代がありました。実は先日Facebookでドキュメンタリー映画監督下之坊修子さんが、龍谷大学の学生さんたちに『ここにおるんじゃけぇ』を上映された時の記事を読み関心を持ちました。来年5月始めに2回目の事業としてこの作品上映とトークイベントをしようと思っています。障碍故に、自分の意思ではなく不妊手術を受けた女性を追った作品です。

ストーマのことばかり気にしていたので、谷さんの映画を見ているつもりでも、この話は意識から漏れていました。うかつにも皆さんと一緒に見ていて、ハッとしました。「知る」ってことは大事だと思いました。私自身、正直に言うと、ストーマのことを余り知りませんでした。今回講演会をするということで、自分なりにいくらか勉強しました。外見からはわからないけれど、内部障碍を抱えた人がおられる、そういう人たちがひょっとしたら自分とすれ違ったところにおられるのかもしれないという想像力を働かすことが、とても大切だと思うようになりました。そういう意識を持てば、きっと行動も変わると思うのです。良いと思われることを知ったら、自分の糧にして、他者への働きかけにしていただきたいと思います。「ストーマ」への理解を広げるために、今日がそういう学びの場になれば良いなぁと思って企画しました。
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壁に掲示した3つの額では、真山亜子さんが2004年墨絵画家で児童文学作家岡田潤さんとそのご家族と結成した「あっこりゃまた一座」公演の様子を紹介しました。大腸と小腸のWストーマになった2年後のことで、ステロイドを30ミリ飲んでおられたので、その副作用でまん丸なお顔です。

額の下に並べたのは、東京の(株)ホリスターさんから送っていただいたカタログ『ストーマを造設された患者様へ』(消化官用と泌尿器用)とダンサックの『患者様向けガイドブック』(消化管ストーマ編と尿路ストーマ編)、コロプラスト(株)様から送ってもらった『ストーマケアと暮らしのガイドブック』(消化管・尿路ストーマ用)。6月に京都市内の病院でストーマの手術を受けられた方が病院でもらわれた資料であることから、事前学習にと送ってもらった資料です。参加いただいた方が、それぞれ自由にお手にとって持ち帰って下さいました。ストーマに関心をお持ち下さったことが分かり、このことも嬉しく思いました。

他にも休憩時間中に、真山さんが取材を受けた記事の数々や、谷さんが持参して下さったパウチなどのストーマ装具を実際に触れて見て貰いました。

さて、15分間の休憩の後、真山さんに登壇していただき「泣き笑いストーマ物語 真山亜子の場合」を語っていただきました。スクリーン下にスタンバイされた真山さんは、
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手話で挨拶をされました。「私の名前は、真山亜子です」。
真山さんと谷さん
実はこの日、谷さんと初対面の挨拶をされて直ぐに「手話を教えて下さい」と依頼されました。その成果を早速、お客様の前で披露されたのです。写真は世界共通の手話「I LOVE YOU」。
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「皆さんに会えて嬉しいです」。この後は「私の手話はここまでです」と手話で話されると、皆さんの中から温かい笑いが起こって、
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拍手が。谷さんが「拍手は両手をヒラヒラさせる」と言うと、手をヒラヒラさせて拍手を送っておられました。ひとつひとつ、簡単な手話から覚えていけば良いですね。真山さんは「私の手話が通じて嬉しかったです。良い機会をいただいたので、今後も手話の勉強をしていきたいと思います」と後で書いてくださいました。前向きな姿勢が、とても素晴らしいです‼