ご案内が大変遅くなりましたが、11月12日共に生きる会の催しを開催します。
11月12日(日)13:30~16:30、おもちゃ映画ミュージアムで開催します。なお、最初にお詫び申し上げますが、上映する映画『凱歌』は日本語字幕なしで、90分です。聞こえにハンディがある方で、参加を希望される方は、事前にご連絡を頂ければ、採録シナリオ(A3判4枚)をお送りいたします。何卒ご了承くださいませ。
催しのタイトルも長いのですが、その分、思いを一杯込めて付けました。「誰もがその人らしく生きられる社会をめざして~ドキュメンタリー映画『凱歌』から人の尊厳を考える~」です。
2021年2月に坂口香津美監督が9年の歳月をかけてつくられたドキュメンタリー映画『凱歌(がいか)』を京都シネマで見て、深く感じるものがあり、この作品のことは以後もずっと頭にありました。その頃、たまたまFacebookで下之坊修子監督が龍谷大学の学生さんたちに強制不妊手術問題をテーマにしたドキュメンタリー映画を上映されたことを知り、そこで紹介された感想文を読んで、「若い人たちもこの問題に関心を持って観てくださるのだ」と思い、「共に生きる会」第2回事業として、その年6月に下之坊監督の講演と『ここにおるんじゃけぇ』を上映しました。
このドキュメンタリー映画の主人公佐々木千津子さんの顔と実名を出して、強制不妊手術問題を訴える勇気ある行動が契機になって、2018年5月17日国家賠償責任を問う裁判が札幌、仙台、東京で始まります。この時に京都市にある全国手話研修センター日本手話研究所が「優生保護法」を示す手話を作りました。
4月30日にお話を伺った小林寶二さんご夫妻は、この裁判を契機に、長年家族を恨んでおられましたが、悪かったのは国だと知り、2018年9月28日高尾辰夫さん夫妻と共に提訴されました。全国各地で裁判が続いていますが、当事者たちは既に高齢で、尊厳を守るための裁判に費やせる時間はそう長くはありません。一日でも早く、この問題が解決するよう国は過ちを認め、被害者救済に努めて欲しいと願います。その動きを促進するためには社会全体でこの問題に関心を持ち、世論を喚起することが欠かせないと思って、今回の取り組みをします。
2019年4月に成立した旧優生保護法被害者に対する一時金支給法は、被害者と認定された人に対し、僅かばかりの320万円を支給するというものですが、この申請期限が来年4月に迫っています。京都では記録で残っている被害者は95人おられますが、申請者は15名にとどまり、その中で認定されたのは14名。「世間の目を気にして」申請を躊躇っておられる人もおられましょうし、ご自分が当事者と知らない人もおられるでしょう。
「世間の目を気にして」というのが、今回のテーマ「誰もがその人らしく生きられる社会」ではないことを表しています。こうした社会を作り出しているのは、私たち自身だということにもっとみんなで気付くことが必要だと思います。
つい先日、石井裕也監督『月』を観てきました。映画は2016年7月26日相模原市の知的障害者施設やまゆり園の職員が、入所していた障害者19人を殺害し、障害者と職員26名に重軽傷を負わせた事件を題材にした辺見庸さんの小説『月』を元にしています。加害者の身勝手な考え方による物差しで、「生きる価値のある者」と「価値のない者」を線引きし、価値がないと判断した者を排除する。その考えは優生思想そのものです。1948年に制定された優生保護法は、1940年に作られたナチスドイツの遺伝病子孫予防法を参考にしました。
京都府立京都学・歴彩館に強制不妊手術問題の資料が保存されていて、それらを複写して綴じた数冊のファイルがあり、先日閲覧してきました。分厚いファイルの中から、いくつか目に留まったページを複写してきましたので、11月12日にお読みいただけるようにします。手書きの黄ばんだ用紙に書かれた文書の中から最初にコピーしたのは「法律/優生保護法をこゝに分布す/御名御璽 昭和23年7月13日/法律第156号/優生保護法/第一章総則(この法律の目的)/第一條、この法律は優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに母性の生命健康を保護することを目的とする(定義)/第二條、この法律で優生手術とは生殖腺をを除去することなしに 生殖を不能にする手術で命令をもって定めるものをいう/2 この法律で人工妊娠中絶とは胎児が母体外において生命を保続することが出来ない時期に人工的に胎児及びその付属物を母体外に排出することをいう」←ここまでが1ページ目。
厚生省公衆衛生局長が各都道府県知事宛てに出した1949年10月24日付け文章の末尾には「その上優生手術は一般に方法が容易であって格別危険を伴うものではないのであるから、前に述べたような方法により、手術を受ける者の意思に反してこれを実施することも何等憲法の保障と反するものではない。」と書いています。
手術を受けさせられる側の心理的肉体的苦痛、苦悩に全く思いを致すことなく、北海道衛生部/北海道郵政保護審査会」が作成して各地に送った「優生手術(強制)千件突破を顧みて」のように粛々と手術件数を高めることに邁進していきます。「昭和30年12月で(北海道優性保護審査会が)回を重ねること59回、その数は1012件に及んだ。件数においては全国有数の約五分の一を占め他府県に比し群を抜き全国一位の実績を収めている」と自慢しています。1012名の方がこの陰で泣いているのです。やまゆり学園の加害者植松と同じ冷たい視点で物事を決めて行っているのが分かり、空恐ろしくなります。しかも、被害者たちの苦悩は、その日から一生背負わせられ、死ぬ迄続くことへの想像力が欠落しています。
11月12日にご覧頂く『凱歌』では、元ハンセン病患者らが強制不妊手術を受けさせられた体験を語っています。チラシに写っているきみ江さんの夫は、30歳の時に多磨全生園内で結婚するために麻酔もなく精管を切除され、余りの痛さに起き上ったと証言。撮影時81歳だった女性は、妊娠9か月だった19歳の時に堕胎をさせられ、鉄の容器の中で赤ちゃんが顔を伏せて殺された様子を述べ、「その泣き声が今だに耳から離れません」と声を震わせます。
これは10月21日の京都新聞記事。写真の男性のお母さんは34歳の時に夫に精神疾患を疑われ、京大病院に入院させられ、麻酔で眠っている間にお腹の子どもを「塵芥を捨てるように取り出され、葬り去られた」と手記で残していました。カルテには母親が医師に「私と子どもを助けて下さい」と拒んでいることも書いてありました。晩年母親は「若い時は辛くて死のうと思った」と男性に話していたそうです。
その京大病院から1949(昭和24)年11月19日に、優生保護法の規定で禁止されている放射線照射について学術研究のためにこれを行いたい旨問い合わせがあり、厚生省に「優生保護法第二條の優生手術について伺」しても良いかと起案され、11月25日に施行されている文書が残っています。原爆が投下された広島に住む佐々木千津子さんがコバルト照射を受けて子どもを産めないようにさせられたのは、どうしてなのかと思っていましたが…、彼女は亡くなるまでこの後遺症で苦しまれました。
さて、上映後にこうした強制不妊手術問題を精力的に取材しておられる京都新聞森敏之記者に登壇して頂き、わかりやすく今現在の状況についてお話し頂きます。22日ひと・まち交流館 京都で「優生保護法による被害者とともに歩む大学習会」が行われ、4月30日に神戸市長田区でお話を伺った皆さんらによる講演「裁判勝利・優生思想克服に向けともに歩もう」と森記者による報告「京都府内の被害実態報告と現在の課題」があります。11月12日の予習を兼ねて私も参加してきます。聾宝手話映画『ヒゲの校長』で尽力された大矢暹さんが22日の学習会のように人々の心を動かして、誤った優生思想を克服しようと一生懸命に取り組んでおられる姿はとても素晴らしいです。
「共に生きる会」副代表の谷進一さんは今、この問題を広く世の中に知って貰おうと大矢暹さんや小林寶二さんらの協力を得て、新作映画『沈黙の50年』を撮影中です。11月12日は、その予告編をご覧頂く予定です。お忙しいとは存じますが、多くの方にお越し頂いて、この問題について一緒に学びましょう‼
最後にNHKEテレハートネットTVで特集された「旧優生保護法を考える(1)私たちが奪われたもの(2023年7月17日、7月28日再放送)(2)“解決”への道(7月18日、再放送7月29日)を紹介しますので、ぜひご覧下さい‼
なお、会場のおもちゃ映画ミュージアムの住所は、京都市中京区壬生馬場町29-1。阪急「大宮」駅・嵐電「四条大宮」駅から徒歩約7分、又はJR二条駅・地下鉄二条駅から徒歩約8分。市バス「みぶ操車場前」から徒歩1分です。四条通と三条通を結ぶ斜めの「後院通」沿いに小さな看板を出しています)。地図はこちらからご覧頂けます。
画像の上でクリックして下さると、拡大してご覧になれます。一緒に活動して下さる仲間も募集しています‼
11月12日(日)13:30~16:30、おもちゃ映画ミュージアムで開催します。なお、最初にお詫び申し上げますが、上映する映画『凱歌』は日本語字幕なしで、90分です。聞こえにハンディがある方で、参加を希望される方は、事前にご連絡を頂ければ、採録シナリオ(A3判4枚)をお送りいたします。何卒ご了承くださいませ。
催しのタイトルも長いのですが、その分、思いを一杯込めて付けました。「誰もがその人らしく生きられる社会をめざして~ドキュメンタリー映画『凱歌』から人の尊厳を考える~」です。
2021年2月に坂口香津美監督が9年の歳月をかけてつくられたドキュメンタリー映画『凱歌(がいか)』を京都シネマで見て、深く感じるものがあり、この作品のことは以後もずっと頭にありました。その頃、たまたまFacebookで下之坊修子監督が龍谷大学の学生さんたちに強制不妊手術問題をテーマにしたドキュメンタリー映画を上映されたことを知り、そこで紹介された感想文を読んで、「若い人たちもこの問題に関心を持って観てくださるのだ」と思い、「共に生きる会」第2回事業として、その年6月に下之坊監督の講演と『ここにおるんじゃけぇ』を上映しました。
このドキュメンタリー映画の主人公佐々木千津子さんの顔と実名を出して、強制不妊手術問題を訴える勇気ある行動が契機になって、2018年5月17日国家賠償責任を問う裁判が札幌、仙台、東京で始まります。この時に京都市にある全国手話研修センター日本手話研究所が「優生保護法」を示す手話を作りました。
4月30日にお話を伺った小林寶二さんご夫妻は、この裁判を契機に、長年家族を恨んでおられましたが、悪かったのは国だと知り、2018年9月28日高尾辰夫さん夫妻と共に提訴されました。全国各地で裁判が続いていますが、当事者たちは既に高齢で、尊厳を守るための裁判に費やせる時間はそう長くはありません。一日でも早く、この問題が解決するよう国は過ちを認め、被害者救済に努めて欲しいと願います。その動きを促進するためには社会全体でこの問題に関心を持ち、世論を喚起することが欠かせないと思って、今回の取り組みをします。
2019年4月に成立した旧優生保護法被害者に対する一時金支給法は、被害者と認定された人に対し、僅かばかりの320万円を支給するというものですが、この申請期限が来年4月に迫っています。京都では記録で残っている被害者は95人おられますが、申請者は15名にとどまり、その中で認定されたのは14名。「世間の目を気にして」申請を躊躇っておられる人もおられましょうし、ご自分が当事者と知らない人もおられるでしょう。
「世間の目を気にして」というのが、今回のテーマ「誰もがその人らしく生きられる社会」ではないことを表しています。こうした社会を作り出しているのは、私たち自身だということにもっとみんなで気付くことが必要だと思います。
つい先日、石井裕也監督『月』を観てきました。映画は2016年7月26日相模原市の知的障害者施設やまゆり園の職員が、入所していた障害者19人を殺害し、障害者と職員26名に重軽傷を負わせた事件を題材にした辺見庸さんの小説『月』を元にしています。加害者の身勝手な考え方による物差しで、「生きる価値のある者」と「価値のない者」を線引きし、価値がないと判断した者を排除する。その考えは優生思想そのものです。1948年に制定された優生保護法は、1940年に作られたナチスドイツの遺伝病子孫予防法を参考にしました。
京都府立京都学・歴彩館に強制不妊手術問題の資料が保存されていて、それらを複写して綴じた数冊のファイルがあり、先日閲覧してきました。分厚いファイルの中から、いくつか目に留まったページを複写してきましたので、11月12日にお読みいただけるようにします。手書きの黄ばんだ用紙に書かれた文書の中から最初にコピーしたのは「法律/優生保護法をこゝに分布す/御名御璽 昭和23年7月13日/法律第156号/優生保護法/第一章総則(この法律の目的)/第一條、この法律は優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに母性の生命健康を保護することを目的とする(定義)/第二條、この法律で優生手術とは生殖腺をを除去することなしに 生殖を不能にする手術で命令をもって定めるものをいう/2 この法律で人工妊娠中絶とは胎児が母体外において生命を保続することが出来ない時期に人工的に胎児及びその付属物を母体外に排出することをいう」←ここまでが1ページ目。
厚生省公衆衛生局長が各都道府県知事宛てに出した1949年10月24日付け文章の末尾には「その上優生手術は一般に方法が容易であって格別危険を伴うものではないのであるから、前に述べたような方法により、手術を受ける者の意思に反してこれを実施することも何等憲法の保障と反するものではない。」と書いています。
手術を受けさせられる側の心理的肉体的苦痛、苦悩に全く思いを致すことなく、北海道衛生部/北海道郵政保護審査会」が作成して各地に送った「優生手術(強制)千件突破を顧みて」のように粛々と手術件数を高めることに邁進していきます。「昭和30年12月で(北海道優性保護審査会が)回を重ねること59回、その数は1012件に及んだ。件数においては全国有数の約五分の一を占め他府県に比し群を抜き全国一位の実績を収めている」と自慢しています。1012名の方がこの陰で泣いているのです。やまゆり学園の加害者植松と同じ冷たい視点で物事を決めて行っているのが分かり、空恐ろしくなります。しかも、被害者たちの苦悩は、その日から一生背負わせられ、死ぬ迄続くことへの想像力が欠落しています。
11月12日にご覧頂く『凱歌』では、元ハンセン病患者らが強制不妊手術を受けさせられた体験を語っています。チラシに写っているきみ江さんの夫は、30歳の時に多磨全生園内で結婚するために麻酔もなく精管を切除され、余りの痛さに起き上ったと証言。撮影時81歳だった女性は、妊娠9か月だった19歳の時に堕胎をさせられ、鉄の容器の中で赤ちゃんが顔を伏せて殺された様子を述べ、「その泣き声が今だに耳から離れません」と声を震わせます。
これは10月21日の京都新聞記事。写真の男性のお母さんは34歳の時に夫に精神疾患を疑われ、京大病院に入院させられ、麻酔で眠っている間にお腹の子どもを「塵芥を捨てるように取り出され、葬り去られた」と手記で残していました。カルテには母親が医師に「私と子どもを助けて下さい」と拒んでいることも書いてありました。晩年母親は「若い時は辛くて死のうと思った」と男性に話していたそうです。
その京大病院から1949(昭和24)年11月19日に、優生保護法の規定で禁止されている放射線照射について学術研究のためにこれを行いたい旨問い合わせがあり、厚生省に「優生保護法第二條の優生手術について伺」しても良いかと起案され、11月25日に施行されている文書が残っています。原爆が投下された広島に住む佐々木千津子さんがコバルト照射を受けて子どもを産めないようにさせられたのは、どうしてなのかと思っていましたが…、彼女は亡くなるまでこの後遺症で苦しまれました。
さて、上映後にこうした強制不妊手術問題を精力的に取材しておられる京都新聞森敏之記者に登壇して頂き、わかりやすく今現在の状況についてお話し頂きます。22日ひと・まち交流館 京都で「優生保護法による被害者とともに歩む大学習会」が行われ、4月30日に神戸市長田区でお話を伺った皆さんらによる講演「裁判勝利・優生思想克服に向けともに歩もう」と森記者による報告「京都府内の被害実態報告と現在の課題」があります。11月12日の予習を兼ねて私も参加してきます。聾宝手話映画『ヒゲの校長』で尽力された大矢暹さんが22日の学習会のように人々の心を動かして、誤った優生思想を克服しようと一生懸命に取り組んでおられる姿はとても素晴らしいです。
「共に生きる会」副代表の谷進一さんは今、この問題を広く世の中に知って貰おうと大矢暹さんや小林寶二さんらの協力を得て、新作映画『沈黙の50年』を撮影中です。11月12日は、その予告編をご覧頂く予定です。お忙しいとは存じますが、多くの方にお越し頂いて、この問題について一緒に学びましょう‼
最後にNHKEテレハートネットTVで特集された「旧優生保護法を考える(1)私たちが奪われたもの(2023年7月17日、7月28日再放送)(2)“解決”への道(7月18日、再放送7月29日)を紹介しますので、ぜひご覧下さい‼
なお、会場のおもちゃ映画ミュージアムの住所は、京都市中京区壬生馬場町29-1。阪急「大宮」駅・嵐電「四条大宮」駅から徒歩約7分、又はJR二条駅・地下鉄二条駅から徒歩約8分。市バス「みぶ操車場前」から徒歩1分です。四条通と三条通を結ぶ斜めの「後院通」沿いに小さな看板を出しています)。地図はこちらからご覧頂けます。
画像の上でクリックして下さると、拡大してご覧になれます。一緒に活動して下さる仲間も募集しています‼