「共に生きる会」第4回事業として計画した「やってみよう、手話」。おかげさまで5月4日は暑いぐらいの好天に恵まれ、無事開催することができました。
午前11時から、四条大宮駅前ロータリーにカラフルなテントが立ち並び、大勢の人が集まってイベントを楽しんでおられます。
ステージの後方と、ステージ横では歌を聴きながらアーティストが作品制作中。歌だけでなく、アートパフォーマンスも披露する場が「大宮グッドフェスティバル」なのです。
さて、私どものチラシを再掲しますと、今回の「やってみよう、手話」は2部制で実施しました。第1部は第11回「大宮グッドフェスティバル」の野外ステージで、バリアフリーユニット「由奈feat一文字鷹」によるパフォーマンスで2曲披露すること。第2部はおもちゃ映画ミュージアムを会場に指文字教室を開催し、一緒に「由奈feat一文字鷹」の新曲に合わせて指文字で歌ってみること。手話への関心が少しでも広がれば良いなぁと思って企画しました。
実行委員会、業者さん、私との間で情報が共有できていない面があったことに土壇場で気付いて少し慌てましたが、どうにか音源の確保もできて、20分の持ち時間いっぱいにパフォーマンスを展開。
ステージで音響環境を整えている間にメンバーの紹介から始まりました。向かって右から聾俳優としても活躍の一文字鷹さんは手話歌担当。隣がリーダーの中川真奈さん。これからステージで披露する2曲の作詞作曲を担当されました。隣が手話通訳を手伝って下さった北東睦美さん。中央でマイクを握っておられるのはMC担当の女性で野外ステージ出演者でもあります。その隣がピアノとバイオリン担当の田中佑季さんで、編曲も担当。左端がヴォーカル担当の中川由奈さんです。メンバーの内二人が東京と愛知からこのステージの為に馳せ参じて下さいました。五月晴れの下でパフォーマンスを繰り広げることが出来て本当に良かったです。
会場に集まって下さった皆様に、上掲歌詞カードと聾宝手話映画『ヒゲの校長』のチラシを予め配布。「由奈feat一文字鷹」メンバーがあらかじめ用意して下さったものです。最初の一曲は聾宝手話映画『ヒゲの校長』のエンディング曲『光の音色-いつか拡がる明日を信じて-』です。
ステージに張り出した『ヒゲの校長』のチラシが、五月晴れに泳ぐ鯉のぼりのように、薫風にはためいています。この作品は昨秋完成して間もない11月3日、第3回事業として国登録有形文化財のNISSHA本館で上映会をしました。大変多くの観覧希望が寄せられましたが、会場のキャパもあって限定160名で実施し、「感動した‼」の声がたくさん寄せられました。
100年前、手話が否定され口話が押し進められる中、子どもたちの適性に合った教育をしていこうと仲間と共に尽力した大阪市立聾唖学校長髙橋潔を主役にした『ヒゲの校長』は、手話の歴史を描いた作品として他にないこともあり注目され、今も全国各地で上映されています。4月の沖縄国際映画祭でも特別上映され、谷 進一監督始め出演者、関係者の皆様が登壇。国内のレッドカーペットを聾俳優が歩いたのは初めてのことだったそうです。前売り券完売ということで、沖縄でも大勢の方がこの作品上映を楽しみにしていてくださったことが分かります。
田中佑季さん(左から二人目)が前もって録音してくださったピアノの音源、それにバイオリンの生演奏で曲が始まりました。由奈さん(右から二人目)の綺麗な歌声、一文字鷹さん(右端)の豊かな表現の手話歌で、歌詞にある「美しき手の言葉」がステージから会場に広がります♪
MCさんから、「手話で『ありがとう』は、どうするのですか?」と尋ねられて、『ヒゲの校長』に出演するだけでなく、得意なイラストも担当された小川和久さん(右から二人目)が、手本を披露。両手の指先を伸ばして、手の甲の上に利き手を乗せ、その手を上に上げます。取り組みで勝利した力士が行司から懸賞金を受け取るときに手刀を切る作法に由来するとも言われています。
18時からの第2部指文字教室講師役のお一人として依頼していた北東睦美さん(左から二人目)が、打ち合わせのために早い目に来てくださっていたのが幸いでした。と言いますのも、観客の中には聾の人も大勢来てくださっていて、北東さんの手話通訳に大いに助けられたからです。
2曲目は、この野外ステージに間に合わせるために、中川真奈さんが作詞・作曲、バイオリンとピアノ担当の田中佑季さんが編曲を担当された『手話あいうえお-明日は輝くさ-』を初披露。実は、依頼した私自身この時初めて聞かせて貰った曲です。2番目は五十音を順にやるので、指文字を覚えて一緒にやってみるのに最適だと思いながら見ていました。
前のステージに立たれた「白鬚」さんと全く異なる雰囲気の「由奈feat一文字鷹」のパフォーマンスが、会場の皆さんにどのように受け止められるのかと思っていましたが、彼女らの友人知人を始め大勢の人がステージを見つめて一緒に楽しんでくださいました。海外からお越しの観光客の人々も足を止めてご覧いただいたりと受けは良く、ステージ後に由奈さんに尋ねたところ「徐々に手話を真似して手を動かして下さる人が増えて、手ごたえを感じた」と言って下さり、一文字鷹さんも「こうしたステージに立てたことを嬉しく思う」と手話で話をしてくださいました。
第1部の動画は、こちらで公開しています。https://www.youtube.com/watch?v=cOioJYClvIM
第2部の「やってみよう、手話」をアナウンスしたり、して貰ったりしたことも功を奏し、ステージをご覧になって指文字教室に来て下さった方が幾人かおられました。そして、午後5時半を過ぎたころから続々と教室参加者が、会場のおもちゃ映画ミュージアムへ。受付時に、この日のためにつくった指文字をデザインした特製ファイルと「由奈feat一文字鷹」さん特製歌詞カードをお渡ししました。
プレゼントしたこの特製ファイルを使って、指文字教室をする催しのはじまり、はじまり。
第2部のあいさつもそこそこに、「由奈feat一文字鷹」に登場して貰って、2回目の『光の音色ーいつか拡がる明日を信じてー』を歌ってもらいました。
中川真奈さん以外のメンバーは初めての来館に。100年を超える木造建築で、天井が高い空間が良い音響効果をもたらし、きっと気に入って下さったと思います。それはお客様にとっても同様でしょう。全体の手話通訳は野外ステージに続き北東睦美さんにお願いしました。
「共に生きる会」副代表をお願いしている『ヒゲの校長』谷進一監督に指文字教室の進行役をお願いしました。「映画の中では古い手話を表しましたが、途中で指文字を考案する場面があります。今は指文字を使って、例えば“き”を顎に当てて“期待する”など指文字と合体した手話がどんどん広まっています」と最近の手話の動向を話して下さいました。指文字は難しくて覚えるのが大変ですが、知っていると自分の名前を告げる時や、こうした合体手話にも対応できるようになるので、覚えておくと良いですね。
谷さんの機転で、口話も手話も上手な聾者の小川和久さんと小畠由佳理さんに登壇していただいて、指文字の指導をして貰いました。この時の読み取り通訳は小川さんの奥様の手話通訳者聡子さんにお願いしました。
谷さんから「指文字“あいうえお”は数字と一緒に学ぶことが多い」とお聞きして、ファイルには記載しませんでしたが、最初に1~10の手話を教わりながらやってみました。続いて指文字を“あ”から順に先ほどのファイルの通りにやってみます。“あ”は“a”の形から、“き”はキツネさんの“キ”、“な”は“n”の形、“ね”は根っこの“ね”などと指文字の背景を教えて貰いながら順に勉強した後、
小川さんが一人一人を順に指名して、単語を指文字で表してみます。写真は北東さんが持参したカードを見せて、それを指名された女性が指文字で表現している場面。その表現の後で、小川さんと小畠さんが手話での表現をしてみせ、その表現になった背景を説明して下さいました。
例えば「おはようございます」は頭を枕から外すしぐさから、「こんにちは」は時計が12時を指した状態から、「おやすみなさい」は辺りが暗くなっていく様子から、などの表現は、指文字よりもわかりやすいですね。小畠さんは「グー、チョキ、パーと覚えると良い」とアドバイス。この様子などは動画を公開していますので、お時間があるときにぜひご覧下さい‼
一通り指文字をやってみた後で、「由奈feat一文字鷹」の皆さんに再度登場して頂いて、この日2回目披露の新曲『手話あいうえおー明日は輝くさー』を歌ってもらいました。2番は田中佑季さんのバイオリンの音色に合わせて、早速みんなで覚えたての指文字で一緒にやってみました。
それぞれのメンバーの挨拶に続き、一文字鷹さんは「生まれた時から聞こえないと気付かないまま大きくなった。“聞こえる”“聞こえない”の違いは何だろう、わからなかった。出来ないことがある。けれども皆さんと一緒に手を取り合いながら助け合えば、できないこともできるようになる。言語が違うだけ。今日は皆さんと一緒に過ごすことが出来て大切な時間でした。これからも、もっともっとこういう場を作っていきたいなと思っています。今日はありがとうございました」と話して下さいました。
聾宝手話さんから、メンバー4人に花束贈呈のサプライズ。
2回も歌をうたって頂き、本当にありがとうございました。この夜届いた感想メールに「やってみよう手話〜指文字とても楽しかったです。小川さんと小畠さんのやりとりが面白かったです。『光の音色』と『手話あいうえお』を2回も観れて良かったです」とありました。うっかりとアンケートをとるのを忘れましたが、この感想メールは参加して下さった皆さんの思いを代表していると思います。
そして、最後にお決まりの集合写真を撮りました。帰りに「良かった!」とわざわざ戻ってきて握手してその思いを伝えて下さった方がおられましたし、映画『ヒゲの校長』を見て、指文字を覚えた女の子もお母様と一緒に参加して下さいました。小さなお子さんを連れた若いお母様の姿もありました。そして、「由奈feat一文字鷹」さんたちからも「楽しかった‼」と言ってくださいました。何より写真にうつっているお一人おひとりの表情が、充実した催しになったことを表しているように思います。
今回も、幾人もの人々に助けて頂きながら無事に終えることができました。皆様本当にどうも有難うございました。心からお礼を申し上げます。
その日の夜に「大宮グッドフェスティバル」の動画がUPされ、「由奈feat一文字鷹」パフォーマンスの様子も映っています。そして、第2部「やってみよう、手話」の動画は、こちらで公開しました。https://www.youtube.com/watch?v=U10ow3eYWuY&t=3762s
手話に関心を寄せて下さる人が少しでも増えてくださったら嬉しいです。