昨日の京都新聞朝刊22面に載った大きな記事です。記事の上でクリックして下されば、拡大して読むことができます。
こちらは、同日社会面掲載記事。
そして、その報道を受けて、今日の京都新聞に載った三日月大造・滋賀県知事の言葉。
共に生きる会で、2021年6月6日に実施した第2回事業「映画『ここにおるんじゃけぇ』から強制不妊問題を考える」の案内記事を同年4月23日付け京都新聞で書いてくださったのも、森記者でした。
昨日の記事の中で森記者は「新憲法のもとで障害者らに強制不妊手術が行われた事実に衝撃を受け、2016年以降、滋賀県や京都府の公文書を基に記事を書き続けてきた」と書いておられます。滋賀県や京都府は京都新聞の取材対象エリアなのです。
私が強制不妊の問題に関心を寄せるきっかけになったのも森さんの記事でしたし、より一層関心を深めることになったのが昨年観たドキュメンタリー映画『凱歌』でした。旧優生保護法下でハンセン病隔離療養所で結婚するために、あと4年ほどしか生きられないほど弱っていた男性に麻酔なしで断種の手術を受けさせ、その妻は子を産む権利を奪われました。ハンセン病は伝染しないし、治療法も既に分かっていたにも関わらずです。この夫婦のほかにも強制不妊手術を受けさせられた人々の事例が描かれていましたが、登場するこの夫婦らの崇高な生き様に感銘を受け、なおさらこの「障害者らから子を産む権利を奪った、公権力による性暴力」(京都新聞記事記事の表現より引用)に私も憤りを覚えるのです。
日本財団のホームページには「ハンセン病の感染力は弱く、ほとんどの人は自然の免疫があります。そのためハンセン病は“最も感染力の弱い感染病”とも言われています」とあります。日本では明治時代に「癩予防法」が制定されて、隔離政策がとられるようになり、患者の人権が大きく侵害され、それが1996年まで続きました。多くの元患者らの人生が狂わされました。
一方の海外では、1873年にノルウェーのハンセン医師が「らい菌」を発見し、1943年になるとアメリカで「プロミン」がハンセン病治療に有効が確認されたのを契機に、治療薬の開発が進み、1981年になるとWHOが多剤併用療法が最善の治療法として勧告。今では完全に治る病気になっています。1996年まで続いた日本の方がどうかしています。
森記者がこの問題に関心を寄せ始めた2016年7月26日に、世間を震撼させた相模原障害者施設殺傷事件が起こっています。元施設職員だった犯人は著しく偏った考えをもっていて「障害者なんていなくなってしまえ」と発言。入所者19名を刺殺し、入所者・職員26名に重軽傷を負わせました。背景にある「優生思想」にマスコミの若手記者さんたちが積極的に強制不妊手術の実態を取り上げるようになり、大きな反響を呼ぶことになります。
朝日新聞2018年5月18日によれば、北海道庁が公開した1958年の文書には、同庁が各地の保健所に対して強制不妊手術の数値目標「保健所あたり年間2件程度」と示し、「管轄医師の積極的な協力を求める」とあり、手術数を増やすよう促していたことが分かります。
今回の京都新聞の記事でも北海道庁と同じように、滋賀県で1970年10月に各保健所長に優生手術該当者の調査及び手術の勧奨について配慮するよう通知しています。おそらく他の自治体でも同様なことが行われていたでしょう。被害に遭った方々の人生は取り返すことができませんが、一刻も早く国や都道府県は情報公開に応じ、誤りを認めて、被害者の方々を救済してあげて欲しいと願います。
森記者には、日常の取材活動に、ローテーションで回ってくる企画もの取材をこなしながらの裁判対応なので、さぞかしお忙しい毎日を送っておられると思いますが、この頑張りに逆に励まされている被害者の方、ご家族、関係者の方もおられるでしょう。記事を読みながら、少しばかり縁を得たことがある京都新聞の対応にも私は拍手を送りたいです。
【9月5日追記】
9月5日付け朝刊に載っていた記事です。国のどうかしている政策で多くの人々がいわれない差別を受け続け、子を持つ権利も一方的に奪われてしまった、この理不尽さ。今からそれを取り戻すことはできはしませんが、被害者たちが生あるうちにその無念さに、国は心から謝罪し、誠意をもって救済してあげてほしいと願わずにはおれません。
【10月30日追記】
今月5日から始めた映画『ヒゲの校長』資料展は、今日が最終日。朝から多くの方が見に来てくださっています。外見では障がいの有無がわかりませんが、期間中にお会いした方々のことを振り返ると、聴覚に障がいをもっておられる方が、随分たくさんおられるのだなぁと実感します。
これは10月26日付け京都新聞の記事ですが、かつて障害を有しておられたり精神疾患があったりした約2万5千人もの人が、誤った優生思想のもとで強制不妊手術を受けさせられていました。国には、二度と同じ過ちを繰り返さないよう徹底的に検証し、被害者全員を救済するよう求めたいです。