2022年03月

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なかなかご紹介できずにいましたが、私が立ち上げた「共に生きる会」の副代表として、また、私どもの一般社団法人京都映画芸術文化研究所 (おもちゃ映画ミュージアム)の監事としても力を貸してくださっている谷進一監督の新作『ヒゲ校長』のクラウドファンディングが4月3日まで実施中です。ぜひお力をお貸しください!!!!!
手話を否定し、口話が推し進められる中にあって、子どもたち一人ひとりの能力、障害の程度に応じて、「口話法」「口話、指文字、手話の混合法」「手話と指文字」を用いられるようにしようと取り組まれた実在の校長先生、高橋潔さんの人生を描いた映画です。
2017年7月に当館でもご覧いただいた『卒業~スタートライン~』(谷進一監督)では、約50年前の京都の聾学校で実際にあったお話でしたが、本作はそれに先立つお話。2017年7月21~23日『卒業~スタートライン~』を上映した時の様子は、こちらで書いております。とても心がこもった温かい上映会となりました。クリックしてお読みいただければ嬉しいです。

まだ映画の完成版台本が出来上がっていない状態の時でしたが、谷監督から「よしもとの芸人さん“次長課長”の河本準一さんが手話ができるそうです」とお聞きし、ダメもとで京都国際映画祭でお世話になっている“きょうのよしもと”木村深雪社長様に「できましたら、ボランティアで河本準一さんに手話の特技を活かして、1日だけでも手話をテーマにした映画に出演していただけないか検討していただけませんか?」と相談を持ち掛けました。これまでの聾宝手話映画の作品は、思いに賛同して集まってくださった方々の手弁当で作られてきました。そういう意味で芸能界の方に多額の謝礼がお支払いできない状況を説明してのことでした。

断られてしまうだろうと半ば諦めていたところ、河本さんのマネージャーさんからOKの返事を頂戴することができ、さっそく谷監督に繋ぎました。そのことがとても嬉しかったことをよく覚えています。しかしながら、お忙しくされていること、コロナの影響で撮影が延期されたことなどで日程の調整が難しかったようです。

そして、いよいよ河本さん出演の場面がやってきました。聾者の妻を持つ聴者の役
。撮影後に谷さんから聞いた話ですが、映画は待ち時間が長いです。その間の段取り、状況説明を河本さんは自ら進んで聾者の方たちに手話で伝えておられ、撮影現場を和ませてくださっていたのだそうです。テレビでみているだけではわからない河本さんの素顔に接して、周りの人はもちろん、あとで教えてもらった木村深雪社長様も私も胸を熱くし、感動を味わいました。今、河本さんがなぜ手話を学ぼうとしたのか、この映画への思いなどを語ったインタビュー映像がアップされていますので、ぜひクリックしてご覧ください。

手話について「新しい言葉として、みんなが手話を覚えれば、誰ひとり取り残さない社会になるんじゃないかな。」「楽しく覚えれば理解し合える社会を作れるかなと思います」と河本さん。そして最後に「そういう意味も込めて、この映画を楽しくご覧になっていただければいいと思います」と締めくくり。改めて、河本さんって、いい人なんだなぁ💛と思います。

私がこの映画に多少なりともかかわったのは河本さんだけですが、時代劇でお馴染みの栗塚旭さんも主人公高橋清の義父にあたる蓮照寺住職役で出演されていて、この映画を気に入って応援してくださっているとお聞きしています。監督はじめスタッフの皆さんや出演者の皆さんの心意気に共感されてのことでしょう。

『ヒゲの校長』は今秋の公開を目標に頑張って制作をしておられます。いずれ各地で公開の折には、ぜひともご覧いただきたいです❤何卒応援をよろしくお願いいたします‼

4月4日追記
2月17日に開始したクラウドファンディングは、最終日の4月3日までに672名の方からの温かいご支援を賜り、5,980,300円も集めることができ成功しました‼ 皆様からの応援を力にして、今秋公開を目指して頑張っておられます。お近くで上映される折には、ぜひともお誘いあわせてご覧ください。

第94回アメリカアカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚本賞の3部門で受賞したシアン・ヘダー監督『コーダ あいのうた』の主人公ルビー(エミリア・ジョーンズ)は、家族の中でただひとり耳が聞こえます。小さいころから家族の耳となって家族を支え、家業の漁業を手伝ってきました。そんな彼女が高校の合唱クラブに入り、彼女の才能に気づいた顧問の先生によって「歌をうたう」ことを夢見るようになります。父親役フランクを演じたトロイ・コッツァーは男性のろう者の俳優さんで初のオスカー受賞者に輝きました。

注目を集めた濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』は、見事に国際長編映画賞に輝きました。誠におめでとうございます👏👏👏この作品には韓国の手話が登場します。

『ヒゲの校長』で主役の高橋潔校長を演じた尾中友哉さんご自身が、
ろう者の両親を持つ耳の聞こえる子どもCODA(Children of Deaf Adalts)として、手話を母語に育ってこられました。こうした優れた作品を通して、手話への関心が広まればいいなぁと思います。


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2022年3月15日京都新聞夕刊
2018年に発足したハンセン病療養所世界遺産登録推進協議会が、2019年から岡山県瀬戸内市の長島にある国立ハンセン病療養所「長島愛生園」で測量や地盤調査をスタート。2021年11~12月にボーリング調査をしたところ、土砂で埋め立てられた土地から、「監房」跡がほぼ完全な形で見つかったのだそうです。1946~50年の間に、療養所から逃げようとした患者ら延べ158人が「監房」に収監された記録が残っていて、1953年廃止後の1970年代中ごろに埋め立てられたのだそう。

国立ハンセン病資料館長さんがおっしゃる通り、国などはこの遺構を未来に生かすため保存していく責務があると私も思います。

昨年3月に立命館大学国際平和ミュージアムで開催された「長島愛生園の人びと」の折に受け取ったリーフレット「長島愛生園 歴史館 この島を、忘れないでほしい。」と「長島愛生園 歴史回廊」には、朝日新聞記事に載っている「監房」の写真などはなく、掲示されていたかの記憶もあいまいですが、これは負の遺産として保存すべき。

ハンセン病の感染力は微弱で薬で完治することが判明してもなお、国は1996年にらい予防法を廃止するまで、患者を強制隔離してきました。昨年観て今も印象に強く残る映画『凱歌』は、東京都東村山市にある多摩全生園に入所する元ハンセン病患者の証言を記録した作品です。療養所で結婚するには、断種や堕胎が強制されました。

「療養所って恐ろしいところ。人間殺すところよ」と19歳の時、妊娠9か月で堕胎を強いられた女性が映画で証言しています。そこから逃走しようとした人々を「懲戒検束権」のもとに拘束した場所が現存していたのです。差別と隔離の歴史を伝える大切な遺構だと思います。

2022年3月16日京都新聞
こちらは、今朝の京都新聞に小さく載っていた強制不妊訴訟に関する記事です。先ごろの大阪高裁、東京高裁の判決を受けて、全国被害弁護団が「無用な争いはやめて、早期に全面的な解決を図ってほしい」と国に上告を断念するよう求めたそうです。皆さん高齢なのですから、ほんとうに「待ったなし」。ぜひとも思いに沿って一日も早く良き判断をしていただきたいです。

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2022年3月12日付け強制不妊社会面
昨日は、大阪高裁判決を不服として、国が上告したことで、11日の裁判の行方を心配していましたが、今朝の新聞を読んで、雲一つない青く澄み切った今日の空のように晴れやかな気分でいます。

東京高裁の平田豊裁判長の所感や判決要旨を読んで、なお一層「良い判決だ」と嬉しく思います。願わくば、「本当につらかった、悲しかった、苦しかった。長い道のりでした。ようやく希望の光が見えた」と声を絞り出した原告の思いをくみ取って、国は上告することなく、被害者に謝罪して、救済に全力を尽くして欲しいです。こうこれ以上裁判で長引かせないで、思いに寄り添った施策を早くとってもらいたいものです。

原告の北さん(仮名)は、理不尽な手術を受けさせられたとき、麻酔を打たれたとのことですが、映画『凱歌』で証言された男性の場合は、麻酔もされなかったそうです。どんなに怖くて、痛かったことでしょうか。

多くの人はこの問題にさほど関心がないかもしれませんが、果たして自分がこれら被害者の立場だったらと想像すれば、あまりの理不尽さに怒りがこみあげてくるはずです。

今も、世間からの誤った差別の目を恐れて内に秘めたまま、自身の体験を墓場まで持っていこうと思っておられる被害者の方が多くおられるでしょう。平田裁判長の「手術から長い期間がたった後の訴えであっても、その間に事情が認められ」れば、国の責任を問い救済されることができるように、世論が高まることを期待しています。

【3月25日追記】
今朝の京都新聞に載っていた悔しい記事。原告の男性の「国は私らをどこまでいじめるのか」という言葉に胸がつぶれる思いです。「子どもにいじめはダメ」と教えながら、国はとことん弱い者の味方にはなってくれないようです。。。

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【4月2日追記】

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旧優生保護法のもとで、約25000人もの人が自分の意志ではなく不妊手術を強いられたそうですが、ほとんどの人が、2019年に施行された救済法の支給を受けておられない現状があります。大変な人生を歩まされることになったにも拘らず、わずか320万円という少ない金額ですが、それをも受け取ることができないでおられます。裁判のことが報じられて、忘れようとしていた過去に更に蓋をする人がおられるのかもしれませんが、申し出がしやすい世の中にしていくことも大切だなぁと思います。請求は原則5年間ですから、急がねばなりません。

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IMG_20220309京都新聞対向面
3月8日と9日の京都新聞対向面に掲載された強制不妊問題をめぐる大変残念な記事です。

2月22日大阪高等裁判所は原告側の訴えを認め、旧法を違憲と判断し、国に初の賠償命令を出すという画期的な判決が下されました。しかし国は、この判決が不服だとして、3月7日に最高裁に上告したというのです。高裁判決を受けて、今後も続く裁判への好影響を期待したのですが、国はその希望を打ち砕きました。

このことが、11日予定されている東京訴訟へどのように影響するのかが大いに気がかりです。

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