2020年09月

共に生きる会A共に生きる会裏A

多くの人にとっては、3連休初日になる11月21日(土)に、「共に生きる会」最初の催しをします。取り上げるのは「ストーマ」です。病気や事故などが原因で、肛門や尿道から排泄できなくなったとき、手術でお腹に排泄物の出口(人工肛門や人工膀胱)をつくり、そこに袋状のパウチを貼って受けます。この人工肛門や人工膀胱のことを「ストーマ」といい、ストーマを造設している人のことを「オストメイト」と表しています。

外見からは、まったく分かりませんが、全国には21万人以上のオストメイトがおられます。この夏出会った人の中に、6月に大腸癌が見つかったご主人がオストメイトになられたり、「実は母がオストメイトなんです」という方がおられました。想像以上に身近にオストメイトがおられることに驚きました。

いつどこで、病気や怪我に遭うか、誰も先のことはわかりません。自分や家族など身近な人が、ドクターから「人工肛門や人工膀胱になるかも知れない」と言われたときに、少しでも冷静に受け止められるよう予備知識として知っておくことは大切だと思いますし、そうした人が身近におられるかもしれないと想像力を働かせながら、人に優しく行動することも大切だと思うのです。

『ちびまる子』ちゃんの杉山君役を始め、アニメや海外ドラマに声で多数出演されている真山亜子さんとは、私が普段活動している「おもちゃ映画ミュージアム」のイベントで知り合いました。病気の治療で大腸と小腸の2つのストーマを造設されましたが、全く外見からは分からず、とても明るて素敵な女性です。帰り際にそっと渡して下さったのが、ブーケ(若い女性オストメイトの会)発行の「オストメイトって、なに⁉︎」でした。

それから9ヵ月後の2019年11月5日付け京都新聞連載「病、それから」㊳で、真山亜子さんが大きく取り上げられていました。共同通信配信なので全国各地の新聞にも順次掲載され、お読みになられた方もおられるでしょう。見出しは「二つの難病でストーマ造設」「俳優断念も、『語り』に活路」「人と触れ合い元気になれる」でした。二つの難病というのは、クローン病とベーチェット病です。

記事冒頭部分に「真山亜子さんの人生は病気続きだ」とありますが、本当に若い頃から大変な経験をされていますが、この催しのために連絡を取り合っている間も、ずっと前向きで、親切に対応して下さってありがたかったです。真山さんの「オストメイトについて、少しでも多くの人に理解してもらって、共に過ごせたら」という思いを是非受け止めて、お話を聞いていただければ嬉しいです。

今度の催しのために岡田潤さんがイラストを一新してくださったお話「真山亜子のストーマちゃん物語」と新美南吉原作『でんでんむしのかなしみ』(1935年)を朗読してもらいます。ある日、自分の背中の殻に悲しみが一杯詰まっていることに気付いたカタツムリは、友達に「もう生きていけないのではないか」と自分が背負っている不幸を話します。友達のカタツムリは「悲しみを背負っているのは君だけじゃないよ」と答え、別のカタツムリも同じように答えます。

27日、人気俳優の竹内結子さんが亡くなり、自殺とみられると報道され、とても驚きました。理由はわかりませんが、俳優さんの自殺が相次ぎ、心が痛みます。カタツムリは、「悲しみを背負っているのは自分だけじゃない。私は悲しみを堪えて生きていかなければならない」と、もう嘆くのを止めたところで終わります。「このお話が届いていたなら」と今更ながら、悲しく思います。

真山さんのお話に先駆けて、オストメイトが登場する映画2作品をご覧いただきます。最初に山川公平監督『あんたの家』(2008年)。大阪芸術大学映像学科卒業制作で、ぴあフィルムフェスティバル2010グランプリ、水戸短編映画祭2009準グランプリ、第23回東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」、ロッテルダム国際映画祭2010フォーラム部門で上映された優秀作品です。

もう1作品は一緒に活動している谷進一監督の『Home Nurse~訪問看護の時間~』(2019年)です。役者もこなす谷さんの本業は、高齢者の在宅生活を支援する訪問看護師。便秘、ストーマ、糖尿病、終末期看護の利用者さんを描き、第16回さがの映像祭ほかで上映された短編。監督デビュー作『手話刑事』は手話映像祭で優秀賞受賞、初の長編手話映画『卒業~スタートライン~』(2017年)は関西を中心に東京や横浜などでも上映。詳しくは聾宝手話映画をご覧下さい。

谷さんは手話ができる訪問看護師。その経験を反映して、作品にはストーマご夫妻や終末期看護の家族に手話で対応しています。来年は谷監督の新作手話映画上映を計画していることもあり、ろう者のイラストレーター小川和久さんのご協力でリーフレット「日常使う手話 イラスト50」を作ります。参加者の皆様にプレゼントしますので、これを機会に手話にも関心を持って頂けたら嬉しいです。

他にも、今回ご協力いただいたNPO法人ストーマ・イメージアップ・プロジェクトさんと前掲ブーケさんのストーマに関する冊子もお配りします。ストーマについての理解が進む一助になればと願っています。

今回の取組みは、京都府地域交響プロジェクト交付金、京都市中京区まちづくり支援事業補助金交付事業です。社会福祉法人京都市中京区社会福祉協議会の後援、朱一学区民生児童委員協議会、聾宝手話映画の協力を受けて開催します。

第1部と第2部=各先着25名で、一般1800円(障害手帳持参者と介助者は各1500円。車椅子入場可)。
申し込みは、会場の「おもちゃ映画ミュージアム」へ◎℡075-803-0033◎fax075-803-0034◎直接
  (京都市中京区壬生馬場町29-1)       ◎電子メールfumiyo@toyfilm-museum.jp

皆様のお越しを心よりお待ちしております。そして、お知り合いにもご紹介いただければ幸いです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

                                                                                   

今年5月にふと思い立って、活動を通じて知り合ったお二人に声掛けをして、「共に生きる会」という小さな会を立ち上げました。いくつかの候補の中から、一番短い名称を選びました。資金も何もないのですが、日頃取り組んでいる無声映画を始めとするフィルムの保存活動とは別に、モノではなく「人と人が関わり合いながら、住みやすい社会を作るための一助になる活動ができたら良いなぁ」という思いで呼びかけました。

メンバーは、一般社団法人京都映画芸術文化研究所理事で、おもちゃ映画ミュージアムを運営している太田文代と本業の訪問看護師の他、映画監督、俳優としても活躍の谷進一さん、ホームヘルパー、生活支援員、子ども食堂や博物館のボランティアとして活躍されている藤岡さんの3人です。

No.4-1-11 - 京都ニュース
貼り付けた写真は、保存と活用を訴えている「京都ニュース」の1956(昭和31)年№4の「敬老の日」の動画からとった1シーンです。「京都ニュース」は1956~94年に当時の京都市広報局が制作し、映画館で上映していた市政報告会や祭事、景観の変化など、当時の市民生活の話題を集めた貴重な映像記録です。

3世代同居が普通に見られる富山県の田舎で生まれ育った私などには、写真は今も見慣れた光景ですが、活動拠点の京都市内では住宅事情の関係もあるのでしょうけど一人暮らし世帯や核家族が増えていて、余り見かけることがなくなりました。富山では共働き世帯が多いので、祖父母が孫の世話を引き受けて親を支えている場合が多く、自然とおじいちゃん子、おばあちゃん子が増えて、お年寄りに対しても思いやりがある優しい子が多いように感じています。

小さな我が子を虐待する事件が後を絶ちませんが、親自身に余裕や知識がなく、密室化した室内でどうすればいいのか分からないまま、大事に至っているケースが多いように思います。地域ぐるみで子育てをして、見守り育てることが必要だと思います。

支え、支えられて生きていく社会は、自分にとっても住みやすい社会のはず。今は元気でも、いつ病気や怪我で不自由な生活になるか、先のことは誰もわかりません。

街中でこのヘルプマークを下げている人をよく見かけるようになりました。

helpmark
京都府のホームページを見ると、以下のように書いてあります。

……………………………
外見からは分からなくても援助が必要な方がいます。
このマークを見かけたら、電車内で席をゆずる、困っているようであれば声をかける等、
思いやりのある行動をお願いします。


義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで援助を得やすくなるよう、作成したマークです。

街中や公共交通機関など生活の様々な場所で、周囲からの配慮を必要としている方がいます。
ヘルプマークを身に付けた方を見かけた場合は、電車内で席をゆずる、困っているようであれば声をかける等、思いやりのある行動をお願いします。

……………………………
このマークは身体面で支援が必要な人向けなのでしょうが、こころの面でも、例えば子育てで困難な状況にある親御さん、あるいは、親の愛情を受けられずに内心で悲鳴を上げている子どもさんにも、目に見えるか見えないかは別として、何らかのヘルプマークがあれば良いですね。「どうしたの?」という声かけで救われる場合もきっとあると思うのです。

そして、面倒だからと見て見ぬ振りをする隣人ではなく、多少なりともお節介おじさん、おばさん、お兄さん、お姉さんになって、いろんなことを「我がこと」として考え、手を差し伸べる世の中になれば良いなぁと思います。

会を立ち上げて間もなく、同じ京都市中京区内でALS嘱託殺人事件が起きました。通りから見るいくつものマンションの窓、窓、窓。その窓の向こう側に「安楽死」を願っていた人がいたなんて、と身近で起こった事件だけに大きな衝撃を受けました。

「誰も苦しみを分かってくれない」と感じて孤独に陥り、消えてしまいたいと思ったり、「健康で活躍していないと生きる意味がない」と思ってしまえば、病気や障害を抱えると絶望してしまいます。「生きている、それだけで十分愛おしい」という感覚を大事にできる世の中に、みんなが手を差し伸べながらしていけたら良いなぁと思います。

会を立ち上げて、最初の事業はストーマ(人工肛門、人工膀胱)について体験者のお話をお聞きし、さらにオストメイト(ストーマ保持者)になった人が登場する映画を見て、外見では分からない「ヘルプマーク」の人々のことを知る催しをします。いつ当事者になるか誰も分からないのですから、その時に慌てることがないよう知っておくのも1つですし、そうした人が案外身近におられることに気付くことも、お互いに気持ちよく生きていく上で大切なこと。思いやりのある社会への一歩になればと計画しました。次回は、そのご案内を致します。               ~ 敬老の日に ~

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